摂食嚥下障害の対応方法-むせる-|摂食嚥下ラボ【コラム】

まずは、何によってむせているかを確認しましょう。

何でむせるかによって、対応方法が変わってきます。

①水分

②固形物

③何も食べていない時に時々むせる

 

水分でむせる→タイミングが合っていないかも!?


空気の通り道である気管は、誰でも通常は開いた状態になっています。

食べ物が通過する嚥下の瞬間だけ閉じられて、気管内に食べ物や液体が入ってこないようになります。嚥下と気道閉鎖のタイミングがうまく合わなくなると気管に液体や固形物が入り込み、「むせ」が起こります。特に水分は、スピードが速くばらばらになるので、嚥下のタイミングを合わせにくく、誤嚥が起こりやすくなります。

 

タイミングを合わせるには

・姿勢を改善する

→あごを引く、椅子に深く腰掛ける、かかとをしっかり床につける

・タイミングの合いやすい食べ物を選ぶ

→水分にはとろみをつける、食べ物はまとまりを持たせる

・タミングを合わせる食べ方をする

→食べることに集中し、息を止めて、それから飲み込む

・むやみに声をかけない

→食べることに集中してもらうために声かけは控えましょう。

 

―むやみに声をかけない―

 

固形物でむせる→嚥下のパワー不足


固形物でむせる時は、飲み込む力が弱くてなかなか食べ物を食道に送り込めないことが主な原因となります。

飲み込む力の不足は咀嚼や嚥下に関わる口や喉の筋力が低下することで起こります。

 

パワー不足を補うには

・姿勢を改善する

→あごを引く

・口をしっかり閉じる

→口が開いていると嚥下のパワーが不足します。

 

―自分の指で唇を閉じる―

 

・少ないパワーでものみ込めるものを

→なめらかでのどをするっと通るような食品

・一口の量・速さを調整する

→1回の量が多いと飲み込みにくくなります。多いようなら小さめのスプーンに変えてみましょう。

口の中に次々と入れないよう、適切に声をかけることも必要です。

・繰り返したり交互に食べたりする

→1回ごっくんと飲み込んでもまだ残っている可能性がある場合は、少し経ってからもう一度飲み込んでもらいます。(追加嚥下)

少し飲み込みにくいものを食べた後に、次はとろみのついた汁物やゼリーを食べてもらうというように、のどを通過しにくいものとしやすいものを交互に食べることで、のどに食べ物が残るのを防ぎます。(交互嚥下)

 

―追加嚥下(複数回嚥下)―

 

何も食べていない時に時々むせる→自分の唾液でむせている!?


何も食べていない時にむせる場合は、自分が飲み込んだ唾液にむせている可能性があります。(唾液誤嚥)

 

唾液でむせないようにするには

強く咳をして、意識して唾液を排出したり、しっかり唾液を飲むようにしたりするなどの対応が必要です。時には喉の中を吸引する必要もあるでしょう。

 


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プロフィール

菊谷武先生

昭和63年日本歯科大学卒業 現在、日本歯科大学教授で、東京小金井市にある同大学口腔リハビリテーション多摩クリニック院長を務める。クリニックでは、「スプーン一杯でも食べさせてあげたい」「他の子と同じように上手に食べて欲しい」と求める介護や療育の現場で摂食支援を行っている。

著書に『認知症「食事の困った」に答えます』女子栄養大学出版、『食べる介護がまるごとわかる本』メディカ出版などがある。

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