『嚥下調整食提供における既製品を活用した給食運営のポイント』について、
社会福祉法人市原うぐいす会 特別養護老人ホーム緑祐の郷 栄養課 課長 萱野春菜先生にお話を伺いました。
嚥下調整食を日々の給食に取り入れたい!
そう思っている栄養士さんは多いのではないでしょうか。
元々、当施設の食事形態は利用者様の状態にあわせて「普通・一口大・きざみ・超刻み・ミキサー」の5段階で準備しており、超刻み食・ミキサー食を召し上がっている方の食事摂取量低下が悩みでした。
咀嚼・嚥下機能の低下、ミキサー食は加水により量が増えて食べきれない、超刻み食は口腔内でまとまりにくくむせてしまう、何を食べているかわからない、など多くの課題がありました。
既製品介護食を活用することで少量でも栄養価が高く、安定した物性が保たれ、調理の手間なく提供できる、利用者様に喜んで召し上がって頂けるのでは?と考える一方で、
他部署や調理スタッフに理解してもらえるか、利用者様に召し上がっていただけるか、通常業務をこなしながらの導入準備できるのか・・・
様々な心配や不安を感じ中々始められずにいました。
そんな時、
「少ない量で安全に食事摂取できないか?ソフト食取り入れられない?』
と介護職員から声があがりました。
介護職員も同じ様に嚥下調整食について関心を持っている事がわかり、今が導入のチャンスと思い取り組む事を決意しました。
当施設では既製品嚥下調整食を使用した食事を「なめらか食」の名称で導入しています。
導入までのプロセスをご紹介させて頂きます。
【他部署の協力・理解】
〇行事食の1品からスタート!
初めて目にする、耳にする事でどんなものかわからない職員もいます。
実際に利用者様に提供した時の反応も知りたかった事もあり、果物シリーズやみためがシリーズを行事食の1品として使用して様子観察しました。
見た目が色鮮やかなので、残食も少なく好感触でした。
1品からでも、行事食に使用してみる等少し変化をつけて施設にあった方法でスタートしてみてはいかがでしょうか。
〇いざ、導入へ向けて!
嚥下調整食について理解を深めてもらうため、勉強会・試食の機会を設けました。
勉強会はマルハニチロ様より行って頂き、嚥下の仕組み、嚥下調整食の必要性、商品紹介について等の内容を盛り込んで頂けたので非常にありがたかったです。
勉強会翌日から数日間にわたり試食品を準備して職員に召し上がって頂きました。
実際に食べて、食感や味を知ってもらう事が大事です。
導入して1か月後に介護職員より評価を集めた所、「形があり色鮮やかでよい!」
「食事を認識しやすい様子!」と評価を頂きました。
【栄養課の協力】
(栄養士事務業務)
食事内容をパターン化することで1日分、1食分の栄養価やコストのバラつきを抑えられると考えました。
献立のパターン化は調理員にとっても作業時の混乱がなくなります。
なめらか食の献立作成は常食献立を展開しています。
例えば、普通食が「鮭の塩焼き」ならなめらか食も「鮭」を使用し塩だれをかけています。
味を同じにする事で利用者様に配膳する際にもわかりやすくなります。
また、温野菜シリーズ等切って提供する食品は何等分に切るのか、何個使うのか指示を献立表に記入し、わかりやすくしています。
コスト面では、食材費のみのコストだけではなく、人件費や労力を加味すると普通食と大差ありません。
(調理スタッフ)
検品、調理盛り付け
既製品を使用する事で誰が作っても同じ物性にできるので安心です。
超刻み食を中止し、なめらか食を追加して食事形態の数を5つに保持することで、厨房内作業の負担を軽減しました。
【災害時】
自然解凍で食べられるので、ストックしておくと有事の際にも使用できます。
日頃より利用者様は食べ慣れており、調理スタッフは提供し慣れている物なので両者にとって安心です。