『価格値上がりに関して当院で工夫していること・新商品を導入する』について、
東京医科大学病院 栄養管理科 伊藤明日香先生にお話を伺いました。
食材費高騰に対する当院の工夫
食材費や水光熱費の値上げが続く中で、四病院団体協議会は2022年6月に1994年以来据え置かれている入院時食事療養費において適正な金額に見直すことを求めました。しかしながら現在も尚、金額の変更がないまま各施設では食材費の高騰に対応を迫られていることと思います。当院でも以下のような工夫を実施しています。
▼発注のロット数を上げて単価を安くする!
発注のロット数を上げることで、単価をより安価におさえることができる食品があります。現在使用している食品の中でロット数を上げることで単価が安くなる食品はどれか確認しています。
▼使用食材の種類をしぼる!
単純にロット数を上げただけでは在庫管理が乱雑になる上、消費しきれずロスに繋がる可能性もあります。
そこで、使用食材の種類をしぼり、献立での使用頻度を増やすことで、予備食としてとっておく料理や食品も少なく済みます。これが食品のロス率を減らしていくことにも繋がります。
単に使用する食材を縮小するだけでは患者さんの満足度低下にもつながりかねませんので、当院では献立展開に注目して使用食品の統一化の工夫を行っています。
例えば、常食と軟菜食の展開を想定します。軟らかくするために常食と軟菜食で魚の種類を変えているとその時点で2種類の食品に拡大しますが、調理法を工夫して同じ魚でも軟らかく提供できる料理を検討するといった工夫です。
▼個包装のものの使用頻度を再検討!
以前は、サラダに付加するドレッシングなど調味料の一部を個包装のもので提供していました。今はすでに味が付いた状態での提供に変更する工夫をしています。パックドレッシングからボトルドレッシングに変更することで単価をおさえられます。
▼現在の献立の原価一覧表を再確認!
献立の原価が、一か月の平均値を10~15%を目安に上回る日の献立を抽出し、その献立に限定して修正をしていきます。価格の高騰は日々変動し、修正も計画的に対応できるものではないと思います。そんな中、全体を一から修正するのではなく、価格が平均を上回っているところにポイントを定めて食品の変更などを検討すると効率よく対応できます。
▼付加食品の再検討!
肉、魚、野菜といった食品の原価をおさえるのは減額の幅に限りがありますが、既製品の変更はより減額の見込みがもてます。たんぱく質制限食などの治療食や嚥下調整食では既製品を付加して献立調整を行うことも少なくないため、もう一度現在使用している付加食品の類似商品はないか再確認しています。
新商品導入する際の多職種への説明方法
新商品を導入する際は、必ず栄養科内での試飲・試食会を開催しています。まずは管理栄養士の視点で使用できるかどうかを判断しますが、栄養補助食品などを実際に患者さんに提供するとなると医師や看護師に提案していく必要があります。その際に大切にしていることは、「なぜこの商品が必要なのか」「この商品がどんなメリットにつながるのか」の視点を踏まえて提案するようにしています。なんとなく良さそうだから、ではなく作用機序や報告されている論文や調査の結果を一緒に添えて提案することを大切にしています。栄養や食事のことを任せてもらうからこそ、信頼関係を築く努力をしています。
また、実際に食べてもらう・飲んでもらうことも大事にしています。嚥下調整食で使用している既製品は実際に調理したうえで院内の嚥下評価を担当して下さっている耳鼻咽喉科の医師や摂食嚥下認定看護師、言語聴覚士など多職種において評価をしていただいた上で導入を決定しています。
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