コラム|栄養マネジメント強化加算の取り組み

栄養マネジメント強化加算の取り組みについて、

社会福祉法人親善福祉協会 介護老人保健施設 リハパーク舞岡 栄養課 苅部先生にお話を伺いました。

栄養マネジメント強化加算 算定要件


1.管理栄養士を常勤換算方式で入所者の数を50(施設に常勤栄養士を1人以上配置し、給食管理を行っている場合は70)で除して得た数以上配置すること。

2.低栄養状態のリスクが高い入所者(低栄養状態が中リスク・高リスク)

①医師、管理栄養士、看護師等が共同して作成した栄養ケア計画に従い、食事の観察(ミールラウンド)を週3回以上行い、入所者ごとの栄養状態、嗜好等を踏まえた食事の調整等を実施すること。

②入所者が退所する場合において、管理栄養士が退所後の食事に関する相談支援を行うこと。

3.低栄養状態のリスクが低い入所者(低栄養状態リスクが低リスク)にも、食事の際に変化を把握し、問題がある場合は、早期に対応すること。

4.入所者ごとの栄養状態等の情報を厚生労働省に提出し、継続的な栄養管理の実施に当たって、当該情報その他継続的な栄養管理の適切かつ有効な実施のために必要な情報を活用していること。(LIFEへのデータ提出とフィードパックの活用)

 

管理栄養士の体制の強化


栄養マネジメント強化加算の算定のためには50床に1名(常勤 栄養士がいる場合は70床に1名)の管理栄養士の配置が必須とされ、多くの施設では管理栄養士の増員が必要となりました。当施設では事務長から増員後の業務量について提示を求められました (図)。すると事務長・施設長は、栄養マネジメント強化加算の算定要件に管理栄養士が退所後の食事に関する相談支援を行うこと、通所サービスの栄養アセスメント加算、栄養改善加算をも算定することで、地域に栄養ケア・マネジメントを繋げていくという観点は重要であると判断され管理栄養士の増員を認めてもらえました。

 

図1. 施設長・事務長に提示した管理栄養士の業務量

 

栄養マネジメント強化加算の算定のためのポイントを踏まえて~症例紹介~


経過:80代女性・要介護3・認知症高齢者の日常生活自立度Ⅱb

50代の息子と二人暮らし。

5年前にアルツハイマー型認知症と診断された。

日中は独居で自宅内は伝え歩き、排泄は自立で生活していた。訪問介護サービス(週4回、主に家事援助)や、他県に住む娘の訪問(月2~3回)により生活していた。先月、掛りつけ医から低栄養状態と診断され、居宅事業所の介護支援専門員の勧めもあり当施設に入所した。

 

〈ご家族の希望(息子)〉

最近、仕事が忙しく、母の事は姉やヘルパーさん任せになっていました。以前は編み物が趣味だった。今はボーっとしていることが多い。このまま食事が摂れなければ、特養に申し込みたいと思います。まず、バランスのよい食事が1日3回摂れ、体力が回復できればと思います。

 

栄養スクリーニング:体重減少率6か月に15.6%(通常体重45.0㎏に対し38.0㎏、6か月で7.0㎏減)により、低栄養状態のスクリーニングは高リスク

栄養アセスメント:既往歴 アルツハイマー型認知症、貧血

身体計測;握力計測不能、下腿周囲長右25.0㎝、左25.5㎝

その他; 浮腫無、ツルゴール低下

摂食嚥下機能の評価;RSST1回、OD不能で嚥下機能の低下。

その他の情報;無歯顎で義歯は汚れて使用していなかった口腔内も食物残渣を認め、舌の汚れが目立った自宅での食事摂取量については聞き取り不可。息子様の話では「ヘルパーさんの料理(やわらかく工夫はしている)が残っていることが多く、近隣に住む姉(氏の長女)が購入した市販品のミキサー食(UDFかまなくてよい)は、食べられていたようだ」。

 

栄養診断

P(問題):経口摂取量不足

E(原因):義歯未装着

S(兆候・症状):6か月間の体重減少7Kg(通常体重45㎏に対し38㎏)

 

栄養ケア計画

◇長期目標(6か月):体重42.0㎏ 食事形態は学会分類コード4(ソフト食)

◇短期目標(3か月)

①栄養補給・食事

♯1. 3か月後、体重40.0㎏

〇必要栄養量 エネルギー1,500kcal/日、たんぱく質60g/日、水分1,620ml/日

一日の必要な栄養素等を摂取する(担当:医師、管理栄養士)。

〇少量頻回食で見た目を工夫する。食欲不振であることから介護用食品(学会分類コード2-1)をハーフ量とし、補食(学会分類コード2-1)を活用し6回食とする(担当:管理栄養士、介護士、調理師)。ご家族へ嗜好を確認し考慮する。週三回以上のミールラウンドにて食事の摂取状況を確認し本人へ聞きとる(担当者:全職種)。

②栄養食事相談

♯1.食事や水分の必要性を伝える

〇1日三回の食事、定期的な水分補給の重要性を伝える(担当:医師、看護師、管理栄養士)

③多職種による課題の解決など

♯1.義歯の調節を行い食事(食事形態は学会分類コード3(ムース食))が摂取できる。

〇歯科医師による義歯作製(担当:歯科医師)。

〇適合した義歯作製までは、咀嚼にあわせた食事形態で提供する(担当:歯科衛生士、管理栄養士)

♯2.食事形態の評価

〇毎食時の観察(担当:介護士)

〇咀嚼と嚥下の評価を適宜実施する(担当:理学療法士、看護師、管理栄養士)

 

管理栄養士によるミールラウンド:(初回)義歯は未装着で、口腔内は無歯顎。観察ではムース食(学会分類コード3)を押しつぶすのに時間がかかっていた。姿勢の崩れはない。水分は薄いとろみではむせていた。食後の観察では、頬の内側や口腔内に食物の残渣があった。

週3回以上のミールラウンドで管理栄養士は、食事にかかる時間、口腔内の食物の残渣や飲み込みを観察し、摂食嚥下機能に配慮した水分の形状にプランを変更した。義歯調節により口腔機能が改善されたことに加え、他職種との連携を図り、食事形態を段階的に見直した。

 

6ヶ月後の成果:体重40.0㎏ 食事形態は学会分類コード4(ソフト食)、摂食嚥下機能の評価;RSST1回→4回、OD不能→各4回で嚥下機能は改善した。自宅退所された。

 

退所時の栄養情報の連携:①退所時情報提供書 ②通所事業所 ③訪問介護事業所に、栄養情報提供書を提出した。

 

おわりに


栄養マネジメント強化加算では丁寧な栄養ケアの実践が求められています。「目の前の利用者をよくしたい」「目の前の利用者によくなってもらいたい」思いを、実現させましょう。

 


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