|コラム|ビタミンDの働きとエビデンス

「日本人の食事摂取基準(2020年版)」において、ビタミンDについては、

18歳以上の目安量は男女とも8.5μg/日に引き上げられました。

近年、「ビタミンD」が様々な分野から着目されている理由を追ってみました。

論理的に会話ができる栄養士を目指しましょう!

 

 

1.ビタミンDとは


 

ビタミンDは脂溶性ビタミンに分類され、D2からD7の6種類があります。

食品に含まれているのは主にビタミンD2とビタミンD3で、ビタミンD2は植物性食品には殆ど含まれておらず、

キノコ類に含まれているのみであり、ビタミンD3は、動物に多く含まれています。

また、ヒトの皮膚に存在するプロビタミンD3が、紫外線に当たることによって

体内でビタミンDを生成することが出来ます。(1)

2.ビタミンDの吸収と働きについて


 

ビタミンDは肝臓と腎臓を経て活性化ビタミンDに変わり、主に機能性たんぱく質の働きを活性化させます。

ビタミンDの生理作用として、正常な骨格と歯の発育促進はよく知られています。

また、小腸でカルシウムとリンの腸管吸収を促進させ、血中のカルシウム濃度を一定に調整し、

神経伝達や筋肉の収縮などを正常に行ってくれる役割があります。

 

3.ビタミンDとの食事に関するエビデンス


 

・牛乳アレルギー、乳糖不耐症および菜食主義は食事由来のビタミンDが欠乏する原因となる。(2)

 

・成人の場合、ビタミンD欠乏は骨軟化症を引き起こし、骨の脆弱化が認められる(2.3)。

 

・高齢者はビタミンD不足になるリスクが高い。その理由として、加齢とともに、

皮膚がビタミンDをかつてほど効率的に合成できなくなること、屋内で過ごす時間が長くなること、

また、ビタミンD摂取量が不適切になる可能性があることが挙げられる(2)。

 

・ビタミンDは脂溶性ビタミンであるため、その吸収は消化管の食物脂質吸収能に依存している。

食物脂質吸収能が低下している人はビタミンDのサプリメントを摂取する必要があるかもしれない(4)。

 

・ビタミンDは、骨折予防に寄与している可能性が考えられるが、

フレイル予防を目的とした量を設定できるだけの科学的根拠はない(5)。

 

・日照により皮膚でビタミンDが産生されることを踏まえ、フレイル予防に当たっては、

日常生活において可能な範囲内での適度な日照を心がけるとともに、

ビタミンDの摂取については、日照時間を考慮に入れることが重要(5)。

 

 

4.ビタミンDを多く含む身近な食品例


 

日本食品標準成分表2015年版[七訂]より算出

 

 

 

(参考資料)

  1. 第29回農業資材審議会飼料分科会配布資料
  2. Institute of Medicine, Food and Nutrition Board. Dietary Reference Intakes for Calcium and Vitamin D. Washington, DC: National Academy Press, 2010.
  3. Jones G. Pharmacokinetics of vitamin D toxicity. Am J Clin Nutr 2008;88:582S-6S.
  4. Pappa HM, Bern E, Kamin D, Grand RJ. Vitamin D status in gastrointestinal and liver disease. Curr Opin Gastroenterol 2008;24:176-83.
  5. 日本人の食事摂取基準(2020年度版)

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プロフィール

一般社団法人健康長寿科学栄養研究所代表理事
管理栄養士 麻植有希子先生

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